2026年6月2日、Workspace Studioにループ機能が正式リリースされて、自作エージェントでできることの幅が一気に広がりました。
Workspace Studioは、会社のGoogle Workspaceに追加費用なしで含まれているAIエージェントの自動化基盤です。
テンプレートを有効化するだけでも便利ですが、本当の価値は「自分の業務専用のエージェントを日本語で自作できる」ところにあります。
この記事では、会社でGoogle Workspaceを使っている人に向けて、自作エージェントの設計手順を具体例つきで解説します。
読み終わる頃には、自分の定型業務を1つエージェント化するための設計図が手に入っているはずです。
第1章:2026年6月、Workspace Studioは「自作」の時代に入りました
最初に、直近のアップデートを3つ整理します。
①ループ機能の正式リリース(6月2日)
→ 「Repeat for each」というステップが一般提供になりました。リストやスプレッドシートの行を1件ずつ自動で繰り返し処理できます。これまで同じステップを手動で複製していた作業が消えます。
②日本語UI対応(5月7日)
→ 英語のみだった画面が、日本語を含む7言語に対応しました。ステップ名もヘルプも日本語です。
③NotebookLM連携(5月開始)
→ 「NotebookLMに質問」ステップが追加されて、ノートブックの知識を根拠にした回答をフローへ組み込めるようになりました。
この3つが揃ったことで、「テンプレを使う人」と「エージェントを自作する人」の分岐点が今になっています。
料金の話もしておきます。
Workspace Studioは単体製品ではなく、対応するWorkspaceプランに追加費用なしで含まれています。
対象エディションは限られているので、自分の契約が該当するかは公式ヘルプで確認してください。
参考価格として、Business Starterは年間契約で1ユーザーあたり月額800円(税抜)からです。
為替や契約経路で変わるので、最終確認は公式サイトでお願いします。
実績の数字も規格外です。
Googleの公式発表によると、一般提供前のアルファ期間だけで、30日間に2,000万件を超えるタスクがStudioのエージェントで処理されました。
1日あたり約67万件、1秒に約8件のペースで誰かの面倒な作業が消えていた計算です。
これだけの基盤が、ランチ1回分の月額プランにすら同梱されています。
使わない理由を探すほうが難しいと思いませんか。
第2章:自作の設計3ステップ|「業務の言語化」がすべてです
エージェント自作と聞くと難しそうですが、必要なのはプログラミングではなく業務の言語化です。
設計は3ステップで進めます。
①自動化する業務を1つ選ぶ
→ 基準は3つです。毎週必ず発生する、手順が毎回同じ、判断が軽い。この3つが揃う業務から選んでください。
→ 具体的には、週報の下書き、議事録の整形、添付ファイルの保存、定例のリマインド送信あたりが鉄板です。逆に、初めての相手への提案や、例外だらけのクレーム対応は向きません。
②開始条件とステップに分解する
→ 「いつ動くか(メール受信・スケジュール・会議終了)」と「何をするか(要約・保存・通知)」に分けます。紙に書き出すレベルで十分です。
③日本語で指示文を書く
→ studio.workspace.google.comの入力欄に、分解した内容をそのまま書きます。Geminiがステップを自動で組み立ててくれます。
僕はAIコンサルとして中小企業の支援をしていますが、現場で一番多い挫折パターンは②の省略です。
「経理業務を全部自動化して」のような大きすぎる指示を投げて、Geminiが組んだフローが意図とズレて、「使えない」と判断して終わる流れです。
正直、僕も最初は同じ失敗をしました。
業務をまるごと投げて、出てきたフローが想定と違って、3回作り直しました。
そこで気づいたのは、エージェント作りは新人教育と同じだということです。
「いつ、何が起きたら、何をして、どこに出すか」を1行ずつ言語化できた業務だけが、きれいに自動化されます。
逆に言えば、言語化さえできれば、コードを1行も書かずにエージェントが完成します。
第3章:実例①請求書処理エージェント|新解禁のループ機能で複数件を一気に捌きます
自作の実例、1つ目の紹介です。
月末に集中する請求書メールの処理を、エージェント化します。
これまでのStudioは、添付ファイル1件の保存はできても、「複数の項目を1件ずつ繰り返し処理する」のが苦手でした。
6月2日にループ機能が正式リリースされて、ここが変わりました。
フローの設計はこうなります。
①開始条件
→ 件名に「請求書」を含むメールを受信したときです。
②Geminiステップ
→ 本文と添付から、請求元・金額・支払期日のリストを抽出します。
③ループステップ
→ 抽出したリストを1件ずつ繰り返して、スプレッドシートの台帳に1行ずつ追記します。
④通知ステップ
→ 処理結果のサマリーを自分のChatに送ります。
ここで、フロー作成画面に貼るだけで使える指示文の紹介です。
1件名に「請求書」を含むメールを受信したら、以下を実行してください。231. 添付のPDFをドライブの「経理_受領請求書」フォルダに保存する42. 本文と添付から「請求元・金額・支払期日」を抽出してリスト化する53. リストの各項目を1件ずつ繰り返し、スプレッドシート「請求書台帳」に1行ずつ追記する64. 処理した件数と合計金額の要約を、私にChatで通知する78抽出できない項目は「要確認」と記載してください。9推測で金額を埋めないでください。
「推測で金額を埋めないでください」の一文が大事です。
AIには空欄を埋めたがる性質があるので、お金が絡む処理では必ず縛っておいてください。
会社員の頃、月末の僕は請求書の転記だけで2時間使っていました。
月2時間なら年間24時間、丸3営業日が転記に消えていた計算です。
あの時間が、フロー1本に置き換わります。
第4章:実例②社内FAQエージェント|NotebookLM連携で「規程を読まない問題」を消します
実例の2つ目は、社内の問い合わせ対応です。
NotebookLMに社内規程や業務マニュアルを読み込ませて、「NotebookLMに質問」ステップと組み合わせます。
設計はシンプルです。
①NotebookLMに、経費規程・有給ルール・備品申請マニュアルなどを入れたノートブックを作る
②Chatでメンションされたら起動するフローを作る
③質問文をNotebookLMに渡して、ノートブックの中身だけを根拠に回答させる
④回答をChatに返す
NotebookLMはアップロードした資料の中からしか答えないので、嘘の回答が混ざりにくいのが強みです。
僕がベンチャー企業で15年間働いていた時代、管理職になってから一番消耗したのは「規程に書いてあることを何度も聞かれる」ことでした。
「経費の上限っていくらでしたっけ」という同じ質問に、週3回答えていた時期があります。
質問する側を責める気はありません。
規程のファイルがどこにあるか分からない状態を放置していた、仕組みの問題です。
このエージェントがあれば、質問はChatに投げるだけで、回答は規程を根拠に自動で返ってきます。
聞く側の気まずさも、答える側の消耗も、両方消えます。
僕が運営しているAIサロンでも、この社内FAQの話は一番反応が大きいテーマです。
「何度も同じことを聞いて申し訳ない」と感じている側と、「何度も同じことを答えて疲れている」側が、実は同じ職場に同居しています。
どちらも悪くないのに、お互いに少しずつすり減っていきます。
その構造を、エージェントが間に入るだけで解消できます。
人間関係の摩擦を減らすことこそ、社内エージェントの隠れた価値なんです。
第5章:自作で必ずぶつかる壁|上限と限定プレビューの現在地
ここからは、知らないと設計が破綻する制限の話です。
公式ヘルプの現在値を整理します(2026年6月10日時点)。
①作成できるフロー
→ オン・オフを問わず最大25個です。
②Gmail起点のアクティブなフロー
→ 25個以内です。
③1フローのステップ数
→ 最大20個です。
④1日の実行回数
→ 上限がありますが、具体的な数値は非公開です。24時間ごとにリセットされます。
ネット上には「100個まで作れる」と書いてある記事もありますが、本日確認した公式ヘルプの記載は25個です。
古い数字を信じて設計すると、途中で確実に詰まります。
もう1つ、正直に書いておきます。
SalesforceやAsanaといったサードパーティ連携は、現時点で限定プレビューの段階です。
管理者側でステップやスターターの利用可否を制御できる仕組みもあるので、会社の設定によっては一部機能が使えない場合があります。
「外部ツール連携ありき」で設計すると止まる可能性があるので、最初はGoogle内で完結するフローから始めてください。
実行上限とのつき合い方にもコツがあります。
公式が案内している対処は2つで、毎分実行のような高頻度フローを毎時に下げることと、開始条件を「特定の差出人だけ」「件名に特定の単語を含むときだけ」に絞ることです。
全メールで起動するフローは、上限を一番早く食い潰します。
条件を絞るほど、フローは長持ちします。
この上限を知らずに全業務を一気に自動化しようとすると、25個の枠と実行上限にぶつかって熱が冷めます。
とはいえ、怖がる必要はありません。
最初の1ヶ月は、フロー1本で十分に効果を実感できます。
25個の枠は、本当に効く業務を選び抜くための強制装置だと捉えてください。
第6章:今日から動く3ステップ
最後に、今日できることを3つに絞ります。
①studio.workspace.google.comを開く
→ 画面が開けば自分のプランは対応済みです。開けない場合は、管理者側でオフになっている可能性があるので情シスに確認してください。
②第2章の3基準で、自動化する業務を1つだけ選ぶ
→ 毎週発生する、手順が同じ、判断が軽い。この3つです。
③日本語で指示文を書いて、テスト実行まで回す
→ 本番前にテスト実行で出力を確認できます。失敗を恐れる必要はありません。
僕は1,000回以上AIを使って文章を書いてきましたが、AIで一番リターンが大きいのは創造的な仕事ではなく、毎回同じ手順の定型業務だと断言できます。
テンプレを使う人から、自作する人に変わるタイミングは今です。
その一歩は、今日の10分で踏み出せます。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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