「受託開発は死んだ」は本当か?

@TAKAKING22
日本語23 時間前 · 2026年7月16日
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TL;DR

大部 隆夫が AI が受託開発に与える影響を考察。コーディングがコモディティ化する一方で、人間による問題解決や戦略的意思決定の需要はかつてないほど高まっていると論じます。

最近、タイムラインで「受託開発 is dead」という言葉をよく見ます。AIでソフトウェアがどんどん速く・安く作れるようになって、これまでの「顧客の要望どおりに作って納品する」という受託開発のかたちが、急速に価値を失いつつある。だいたい、そういう文脈で語られています。

最初は正直、「また◯◯ is dead系の煽りか」と思っていました。

というのも、「受託開発 is dead」という話は、AI以前から何十年も言われ続けてきたからです。内製化、クラウド、多重下請け、オフショア。そのたびに「今度こそ死ぬ」と言われて、それでも受託開発はゾンビのように生き残っています。

実は自分も、ずっと事業会社に所属していた人間なので、こうした話題を半分外野から眺めていました。受託開発って大変そうだな、なんとなく近づきたくないな、と思っていたことを覚えています。

そんな自分が、3年前に株式会社ホロラボに参画して、いまは受託開発をはじめとするクライアントワークのど真ん中にいます。正直、参画するとき「受託開発」という言葉には少しひっかかりました。それでも、新しい技術がもたらす変革への挑戦と、会社そのものの魅力が勝ちました。そもそも「受託開発」だって、やってみてから文句言わないとださいよなーと。

あれから3年。経営チームにも参画し、受託開発と本気で向き合ってきました。だからこそ今回は、「受託開発 is dead」という言葉からも逃げずに、本気で向き合ってみます。

「受託開発 is dead」は真実か

真実です。

AI以前から、DXの文脈でのノーコードの取り組みや、内製化の流れはずっとありました。そこにAI(特にAIエージェント)の波が来て、この傾向は一気に強くなりました。非エンジニアでも、ソフトウェアを作れるようになりました。

この手の話をすると、それを生業にしているエンジニアを中心に「品質ガー」「セキュリティガー」と騒ぎになって、「ソフトウェア開発はそんなに簡単ではない」という議論になりがちです。

でも、ソフトウェアに求められる品質は、目的や用途によってさまざまです。顧客向けや実運用に絡むソフトウェアには、それなりのサービスレベルが求められます。一方で、社内で使うツールやPoC(コンセプト検証)に求められるレベルは、相対的に低いことが多いです。そしてこの領域こそ、AIエージェントに代替されやすい、というよりもう代替が始まっているところです。

セキュリティや品質の面も、モデルの進化と、人間側のAI活用の知見が溜まっていくことで、年々差分は埋まってきているように感じます。ほんの2〜3年前まで「AIに支援はさせても、コードを書かせるのはまだ早い」が主流の論調だったのに、今ではAIがコードを書いていることのほうが多いです。この変化のスピードを見ると、現時点では完全に任せることが難しい領域でも、近い将来「人間よりもAIのほうが信頼できる」という状況は、普通に起こりえます。

正直に言うと、自分もエンジニアなので、自分がやってきた仕事が簡単に置き換わるなんて、信じたくない気持ちはあります。でも、死につつあるものは、自分の現場からもハッキリ見えています。煽りでもポジショントークでもなく、これは本当に起きている変化です。

ただし、「受託開発がまるごと死ぬ」という意味ではありません。死ぬのは受託開発ではなく、"つくるだけ" のソフトウェア開発です。なぜそう考えるのか、順番に書いていきます。

① 「受託開発」でひとくくりにできない

受託開発と一言でいっても、人月だけを売る会社、SIer、コンサル、プロダクト伴走、PMO、DX支援まで、中身は全部違います。だから問うべきは「受託開発 is deadか」ではなく、「何が dead なのか」です。

そこを分けて考えると、AIによる価値の低下は、いきなり全部が消えるというより、段階的に進んでいきます。そして、その波が最初に効いてくるのが「コードを書く」という行為の価値です。実際に、開発の生産性が上がって案件の利益構造が変わり始めています。

そしてこの波は、コードを書くところだけでは止まりません。設計、要件定義、その手前の構想へと、少しずつ広がっていきます。だからこそ、どこの価値が先に下がって、どこが残るのかを分けて見ておきたいのです。

だから死ぬのは、"言われた通りにコードを書くだけ" の仕事です。受託開発かどうかは、関係ありません。そしてこの領域は、もう縮み始めています。

ただし、縮み方は一枚岩ではありません。中小の受託開発や小さな自社開発は、内製化と生成AIの波をもろに受けて、案件が消え始めています。一方で、大手エンタープライズの複雑なシステムは、内製だけでは賄いきれないので、今のところそんなに困っていない、という話もよく聞きます。効き方は規模と顧客層でぜんぜん違うので、ここを混ぜると話がぼやけてしまいます。

② そもそも、顧客は「コード」を買っていない

顧客は、コードを書いてほしくて受託しているんだっけ?と考えると、違うんですよね。

顧客が期待しているのは、事業戦略を整理したい、要件を一緒に考えてほしい、意思決定を助けてほしい、社内調整を手伝ってほしい、リスクを減らしたい、といった問題解決です。コードは、そのための一つの手段にすぎません。

このように考えてみると、「コードが安くなった=受託開発が死ぬ」は、かなり短絡した話になります。安くなったのは手段であって、期待されている中身のほうは何も消えていないからです。

これは、事業会社と受託開発の両方を経験した自分の実感とも重なります。事業に踏み込んでいく受託開発の現場もあれば、事業部に言われたものをつくっているだけの、社内請負のような開発チームもある。「事業会社か受託開発か」という線を引いても、実態はもう捉えられません。

しかもこれは受託開発だけの話ではありません。開発とコンサルの境界も溶けています。コンサル会社はどんどん開発部隊を持ちますし、SIerは事業支援を始めています。「SaaS is dead」も同じ構造で、ソフトを売るだけの会社は終わり、BPOや運用や伴走、成果保証まで踏み込む会社は伸びています。コンサルも、SIerも、SaaSも、事業会社も、やっていることがどんどん重なってきています。行き着く先は、顧客にとっての「価値」です。

③ 「考える」と「つくる」が近づいている

ソフトウェアをつくるコストは、長いあいだ、あまりに高いものでした。だからどうしても「考える」と「つくる」は分業になっていました。役割が分かれ、職種が分かれ、組織が分かれ、会社まで分かれがちでした。

AIによって、「つくる」のコストが下がりました。その結果、「考える」と「つくる」が自然と近づき始めています。役割が近づき、職種が近づき、組織が近づき、会社も近づいてきた。いま起きているのは、この変化です。

そして、アジャイル開発が実現したかったことが、まさにこの「考える」と「つくる」を近づけることでした。当時はつくるコストが高くて実現しきれなかった理想に、今ようやく近づき始めています。

実際、自分たちのクライアントワークでも、開発だけでは終わらないケースが増えています。最初は普通の開発だったのに、途中から「事業の進め方も相談したい」となって、PMO、ビジネスモデル設計、プロジェクト推進、意思決定支援まで広がっていく。今では「システムを作る」より「事業を作る」ことのほうが多い現場もあります。これは受託開発なのか?と最初は思っていましたが、もはや境界は気にしなくなりました。

最近FDE(Forward Deployment Engineer)という言葉をよく聞くのも、たぶん同じ流れです。顧客の現場に入り、課題を一緒に考え、必要ならコードも書く。「考える人」と「つくる人」ではなく、"考えながらつくる人"。ここで勘違いされやすいのですが、本質は常駐でも、顧客への物理的な近さでもありません。問題解決への近さです。

ただし、この変化は諸刃でもあります。最近、ある大企業でこんな話を聞きました。最初は事業戦略があった。システム開発が始まる。途中から、作ることだけが目的になる。戦略が消える。そして、使われないシステムが大量に残る。これはAI以前からずっとあった現実です。でもAIで作るコストが下がると、この悲劇はもっと簡単に、もっと大量に起きるようになります。作ることが簡単になればなるほど、「何を作るか」の重みは増していきます。

だから、問題解決に踏み込む受託開発にとって、AIは逆風ではなく追い風です。is deadどころの話ではありません。ただし、問題解決から離れた瞬間に、その追い風は「使われないもの量産マシン」に化けます。

④ 結局、価値の源泉は「人」

ここまで来ると、受託開発もコンサルもSaaSも、価値の源泉は同じだと思えてきます。ソフトウェアそのものではありません。人です。

どの会社でも解決できる仕事は、代替されます。AIでも解決できる仕事も、代替されます。でも、「この人たちじゃないと解決できない」は残ります。「この人たちと働きたい」も残ります。

だから目指すのは、成果物を納めることではなく、顧客が価値にたどりつくためのパートナーであることです。モノではなく、人に価値を感じてもらう。

その筆頭が、意思決定です。AIは候補をいくらでも出せます。でも、決めるのは人です。そして意思決定は、意思決定することでしか上手くなりません。

人の育て方も変わります。自分の部署でも「考える+つくる」へシフトしていて、もちろん苦労もあります。でも、これは研修では身につきません。仕事の中でしか育ちません。

採用の話も少しだけしておきます。最近、AIを理由に若手採用を減らす会社が増えています。「AIがコードを書くなら、ジュニアはいらない」というロジックです。でも、自分は逆だと考えています。AIネイティブな若手のほうが、固定観念がないぶん、自分たちには思いつかない使い方を編み出す可能性があります。短期的に採用を控えることはあっても、人が増えて育っていく環境をつくれなければ、その産業は衰退していくだけです。それはAIのせいではなく、AIがもたらした変化に適応できていないだけです。

エンジニアという職種がなくなるのではありません。"つくるだけ" のエンジニアの仕事がなくなるのです。

すべてのソフトウェア開発が、「価値」に近づいている

「受託開発 is dead」は真実です。ただし、受託開発が死ぬのではなく、"つくるだけ" のソフトウェア開発が死ぬ。エンジニアという職種がなくなるのではなく、"つくるだけ" のエンジニアの仕事がなくなる。そしてそれは、もう始まっています。受託開発は、たまたまその矢面に立っているだけです。

ここまで並べてきた変化を一歩引いて眺めると、もっと大きな絵が見えてきます。事業に踏み込む受託開発。開発組織を持つコンサルティングファーム。成果保証まで踏み込むSaaS。顧客の現場に入るFDE。立場も形式もバラバラなのに、向かっている先はぜんぶ同じです。すべてのソフトウェア開発が、それぞれのかたちで「価値」に近づいているのです。

しかもこれは、新しい潮流ではありません。エンジニアはずっと昔から「つくるだけではだめだ」と知っていて、顧客に、ユーザーに、価値に近づこうとしてきました。その代表例がアジャイル開発です。アジャイル開発が誕生してから、25年。「考える」と「つくる」を近づけたかったあの理想が、AIによって、この数年で一気に加速している。自分にはそう見えています。

だからもう、ソフトウェア開発の「かたち」にこだわっている場合ではありません。受託開発か、事業会社か。SIerか、コンサルか。そこで消耗するのではなく、問うべきは「価値にどれだけ踏み込めるか」です。

7/24に「受託開発 is dead」をテーマに朝まで生討論します

7/24にCreationlineさん主催の「AI時代の受託開発のミライ ─「受託開発 is dead」のその先へ」というイベントに登壇します。

https://creationline.connpass.com/event/398146/

2026年7月24日(金)19:00〜20:30、Zoom開催・参加無料です。

@samuraiRed@sasakendayo と3人で、「受託開発 is dead」をテーマに本音で徹底討論します。

話してはいけないことまで話しかねない3人なので、事前打ち合わせの際に運営の方に「いざとなったら止めてください」と伝えています。きっとリアルタイムでしか聞けない臨場感がそこにあります。

どんな話をするのかって?

答えは……トランキーロ!あっせんなよ!

当日、お待ちしております。

ブログはこちら

https://agile-monster.com/blog/jutaku-is-dead/

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