ダラスは、信じられない暑さだった。
アメリカだから気温が高くてもカラッとしていて、体感温度はそこまでだろうと甘く見ていた。しかし、日向には数分も立っていられないくらいで、こんな中で練習を重ねている選手たちへの尊敬と心配が増した。テキサスの6月、恐るべし。
全てが巨大なダラスの街に、世界中の期待感が帷を下ろす。
ダウンタウンから車で30分ほど走ると、巨大な、マジででかいスタジアムが姿を現した。
自動開閉式の屋根に空調完備、最新鋭の巨大モニターなど、全てが大会を万全の状態で望むためにお膳立てされた最高の空間。
私は、ここで、目撃する。
力になるということ。
オランダがボールを保持し横ずれを繰り返しながら攻め続ける。セットプレーでは恵まれた体格を生かして空中を支配する。これに対し日本は数的優位を作る丁寧な守備で逆襲の機会を伺う。
しかしながら正直に言えば、立ち上がりは日本にとって難しい展開だった。前線からの圧はかかりきらず、ラインを上げるのかパスカットにフォーカスを置くのか、ふわりとした印象もあったように思う。ヒヤリとして、世界基準のGK鈴木彩艶選手の好セーブによって息を吹き返してを繰り返す心臓に悪い時間帯が続く。
そして、迎えた後半。
ついに均衡が崩れ、日本の失点。
一瞬の静寂。空気が物理的にも重くなったのかと勘違いするほどの悲壮がスタンドに降りる。
これまでの日本はオランダという欧州強豪国に勝利したことがない。そのデータが現実的な事実であるということが、淡い期待を抱いていた私たちの頬を叩いたような感覚だった。
ピッチ上の侍たちが前を向く。
ピッチ中央に集まる。円になって互いを鼓舞し合う。
肩を叩き、何かを言い合い、また散っていく。
その熱い姿を見た観客が刺激を受けないわけがなかった。誰かが音頭を取るわけでもなく、どちらの国の派閥でもない観客さえも巻き込んで大きな声援の渦を作り上げていた。7万人越えのスタジアムが今にも爆発してしまいそうなほどに、その声が反響を繰り返す。
そして、分岐が変わる。
中村敬斗選手のゴール、瞬きさえも許さないサマーフィルの超絶逃げ切り弾、これでもかと見せつけるファンダイクを飛び越えた値千金のヘディングゴール。
得点しても失点しても、観衆の応援がどんどん強く大きくなっていく。中継のカメラが振動で3台中2台が再起不能になるほどに、割れんばかりの声援が会場を日の丸色に染め上げていた。
「声援が力になる」というのはよく聞く言葉である。
建前とまでは言わないが、声という波で物理的にシュートが曲がるわけでもないし、私はそれを実感する選手側の発言もできない。理屈とは対極に位置するフレーズではあるので、私はこの言葉を安易に使い過ぎないようにしてきた。
しかし私は今、声が人を前に押し出して、未来を変えていくのを、目の前で見てしまった。もちろん当事者たちの実力が結果のほぼ全てである。それ以上でもそれ以下でもない、理屈でもないところで、心が共鳴する。
声援は、力になる。
私が信じて続けてきたものは素晴らしいものであると、改めて教えてもらった出来事だった。
2026.6.17 / 私が向かう先は全て晴れ、全ての便が飛ぶと豪語する影山より。
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