「日本では、まだマンガ家を目指している人はいますか?」
この前、中国のAIアニメの会社の人と打ち合わせをしていたとき、そんな質問をされて、一瞬ギョッとした。
中国ではいま、アニメ制作のAI生成技術が劇的に進化している。その影響で、膨大な数のショートアニメがTikTokやbilibiliに投稿され、大きな支持を集めている。そして、ショートアニメのクリエイターを目指す人の数が急拡大しているという。
彼らの話で印象的だったのは、AI生成における素材の違いだ。小説をAIに読み込ませると、かなり質の高いアニメが出来上がる。一方で、マンガを読み込ませて生成しようとすると、安定したものに仕上がらない。
その結果、何が起きているのか。ショートアニメのクリエイターを目指すなら、原作となる小説を書くか、それをアニメ化するAI技術を磨くか。少なくとも彼らの見ている世界では、マンガを描くことは、クリエイターを志す人にとって、選択肢にあがらなくなっている。
テクノロジーの進化によって、さまざまな職業が消えていくこと自体は、これまでも理解していた。だが、その中にマンガ家が含まれる可能性があるとは、正直これまで一度も考えたことがなかった。
もちろん、彼らの話がすべてではないだろう。中国は人口も多いし、彼らの見えないところでマンガ家を目指している人もいるはずだ。ただ、彼らがそう感じるくらいには、大きな変化がすでに起きているのだと思う。
マンガ家という職業が消える世界線。そんな未来もあり得るのかもしれないと、大きな衝撃を受けた。そして同時に、これからのAI時代におけるクリエイターのあり方について、改めて考えさせられた。
表現における技術は、これからAIがどんどん代用していく。しかも、その精度は加速度的に上がっていくだろう。ただ、それをどう使うのかというディレクションがなければ、人を感動させるものは生まれない。
やはり、AI時代において重要になるのは、クリエイティブの解像度の高さだ。
その人ならではの独自の世界観を持っているかどうか。
そして、それをどのような形で表現したいのか。
その解像度をどこまで研ぎ澄ませているかが、アウトプットの差を生む。テクノロジーの進化は、その差をさらに拡張していくのだと思う。
例えば、AR三兄弟の川田十夢さんは、AIを使って楽曲を制作し、さらにはミュージックビデオまでAIでつくり、継続的に発表している。そのクオリティは、もはや趣味の延長とは思えないレベルに達しているし、実際にしっかりとファンもついている。
おそらく多くのミュージシャンは、音楽について考える時、音だけが頭の中にあり、他のイメージはぼんやりしていたと思う。川田さんが特殊なのは、音とイメージが同時にかなりクリアな状態で思いつくというところだ。
昔から付き合いがあるが、川田さんの見ている世界はずっと面白かった。それが、テクノロジーの進化によって、これまで以上にダイレクトに、さまざまなフォーマットでアウトプットされるようになっている。
テクノロジーの進化によって、クリエイターの本質が、よりはっきりと可視化されるようになってきているのだと思う。
こうした変化には、純粋にワクワクする。一方で、そのスピードに自分はついていけるのかと、不安を覚える瞬間もある。
人は不安になると、未来を予測しようとする。正しい未来を当てにいき、「このルートなら大丈夫だ」と安心しようとする。そして、そこから逆算して動こうとする。
でも、それはかなり無理ゲーに近い。
テクノロジーの進化は直線的ではない。ある領域で起きた変化が、波紋のように別の領域へと広がっていく。だから、未来を予測しようとしても、その予測を軽々と上回る変化が起きてしまう。そうしたことが、この数年ずっと続いている。
では、どうすればいいのか。
最近、僕は、未来を予測しようとすること自体を、少しずつ手放している。
もともと僕は、未来の仮説を立てるのが好きだった。自分の仮説にワクワクして、それを原動力に動いてきた。だから放っておくと、「未来はこうなるんじゃないか」と、つい頭の中で構想してしまう。
でも、いまはそういう思考を意識的に手放すようにしている。
AIによって、クリエイターやコンテンツの未来がどうなるかを議論するよりも、まずは自分で触ってみる。最新のツールを使ってみて、何ができて、何ができないのかを体感する。
頭で考えるだけでは見えないことが、手を動かすことで見えてくる。その中で、少しずつ勘所が掴めてくる。
未来は、あらかじめ存在しているものを当てにいくものではない。試しながら、自分の中に立ち上がってくるものだと思う。その積み重ねだけが、この時代における、いちばん確かな戦い方なのだと感じている。
もっとAIを使い倒していきたい。そんな気持ちが、より高まってきている。
<noteのコラムを転載>
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