何が起こったか説明しましょう。
今年いちばん成績の良かったファンドが、自分でかけた借金で消えました。
レオポルド・アッシェンブレナー。元OpenAIの研究者で、AIの未来を論じた「Situational Awareness」という論文で有名になった人物です。同じ名前をつけた自分のファンドで、今年ここまで439%という数字を出していました。運用資産は450億ドルまで膨らんでいます。
彼を有名にしたのは、とてもわかりやすい賭け方でした。AIの「ハード」を買い、「ソフト」を売る。具体的には半導体メーカーのSKハイニックスなどを買い持ちにして、アドビのようなソフトウェア株を空売りしていました。つまり彼は「チップは上がる、ソフトは下がる」という予想の両側から利益を取ろうとしていたわけです。
そして実際その通りになり、今年最高のトレードと呼ばれました。
ただし彼は自分のお金だけで勝負していません。自己資金のおよそ4倍まで借金をして、ポジションを膨らませていました。これがレバレッジです。当たっているうちは利益も4倍になります。外れた瞬間に、損失が同じ倍率で襲いかかります。
この賭け方が、7月中旬、すべてが裏目に出たのです。
買っていた半導体株は2週間で30%以上下落。売っていたアドビは、下がるどころか上がりました。言い換えれば、買いでも売りでも同時に負けたのです。これが最悪の形です。
7月24日、彼は投資家宛の手紙でこの暴落を「買い場だ」と説明し、追加の資金を募りました。ただ、残念ながらお金は間に合いませんでした。
7月28日、ブルームバーグが報じました。Citadel Securitiesが、市場の織り込んでいなかったFRBの利上げを予想している、と。ここでパニックが走りました。すでに30%下げていたAI株はさらに崩れます。

そして7月30日、木曜の朝です。バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、JPモルガンという3つのプライムブローカーが、同じ朝に一斉にマージンコールをかけました。プライムブローカーはファンドにお金を貸している証券会社のことで、マージンコールは「担保が足りないので追加で入れてくれ」という要求ですね。日本の証券口座でいう追証と同じ仕組みだと考えてください。入れられなければ強制的に決済されます。3社が同時となると、もう交渉の余地はありません。
そして同じ日、ウォール・ストリート・ジャーナルが衝撃のニュースを報道しました。ケン・グリフィン率いるCitadelが、彼の株式ポートフォリオを丸ごと買い取った。しかも大幅な割引価格で、と。

わかりやすく整理すると、ケン・グリフィンのマーケットメイク部門が金利ショックを言い当て、その数日後に投げ売りが始まったところで、ケン・グリフィンのヘッジファンドが資産を持ち帰った、という感じです。
意図があったと証明した人は、まだ誰もいません。それでもこのタイミングは、あまりに意図的すぎると私は思います。
彼は相場観で負けたわけではありません。借金の量で負けました。方向が合っていても、耐える体力が先に尽きればリターンはゼロになります。レバレッジをかけるというのは、正解にたどり着くまでの時間を自分で削る行為なんです。今回の出来事は、歴史の教訓として語り継がれそうです。
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今回はこれで以上となります。ありがとうございました!!





